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電通事件裁判 過重労働解消の契機に(9月26日)

 広告大手電通の違法残業事件の初公判で、検察側は会社の利益を優先し、労働者の健康を顧みない姿勢が社員の過労自殺を起こしたと批判した。電通側は起訴事実を認め、山本敏博社長も謝罪して改善を約束した。

 しかし電通は、労働基準監督署の指導を受けながら効果的な対策を怠ってきたとされる。24歳で自殺した社員の母は「にわかに、社長の言葉を信じることはできない」と率直な思いを口にした。電通幹部には重く受け止めてほしい。

 電通事件は、一企業や業界にとどまらない課題を見せつけている。働き過ぎによる過労死や健康阻害の深刻さは、日本の社会が長年抱える懸案だ。事件を契機に政府や労使が一体となり、長時間労働を解消できるかが問われている。

 今回の違法残業は2015年に電通入社1年目の高橋まつりさんが自殺したことがきっかけで発覚した。労基署は月105時間の残業など長時間労働が自殺の原因として労災認定した。

 検察当局は高橋さんら社員4人に労使協定(三六協定)の上限を超える残業をさせたとして、法人としての電通を労基法違反罪で略式起訴したが、東京簡裁は異例の正式裁判を開いた。

 初公判で検察側は「顧客第一」を掲げる電通では長時間労働が常態化し、労使協定の上限時間を超える残業をする社員が多数いたと明らかにした。

 是正勧告を受け、電通が三六協定をさらに改定したとする指摘は見逃せない。形式的に協定違反はなくなったが、本来の労働軽減策に逆行するやり方だった。増員や業務量削減、サービス残業解消など労働環境を抜本的に見直す必要があったはずだ。

 裁判は結審し、10月6日の判決でどんな見解が示されるか注目したい。

 電通の労務管理の欠陥は多くの企業にとってもひとごとではない。昨年度に労災認定された過労死は107件、過労自殺は未遂を含め84件に上った。表に出ないケースも多いとされる。

 安倍政権は「働き方改革」を重点政策とし、残業の上限を最長で月100時間未満とするなど労基法改正を進めようとする。だが、これでは健康上危険とされる「過労死ライン」の残業時間容認につながりかねない。

 一部の専門職を労働時間規制から外す新制度導入や、過労死防止に欠かせない労働時間把握の徹底など懸案事項も多い。これらの重要な議論を先送りして衆院解散・総選挙へ向かう現状を見ると、改革への本気度を疑わざるを得ない。

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