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日ロ交渉 首相は説明責任果たせ(11月18日)

 安倍晋三首相はシンガポールでのプーチン・ロシア大統領との首脳会談で、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させる方針を確認した。

 日本政府は一貫して歯舞、色丹、国後、択捉4島の帰属問題の決着後に平和条約を結ぶとの基本的立場を維持してきた。一方で、共同宣言は、両国の平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すとしているが、国後、択捉の帰属については言及がない。

 今回の首相の決断は2島先行返還への方針転換を意味するのか。場合によっては国後、択捉を放棄するようなことがあるのではないか。さまざまな疑問も湧いてくる。北方領土が占領されてから73年、日ソ共同宣言からも62年が経過した。2国間交渉の中でも領土交渉は最も困難だ。結実させるには、政治基盤が安定した双方の指導者による大きな政治決断が必要となる。

 首相は「私とプーチン大統領の手で終止符を打つ」と任期中の交渉妥結に強い意欲を示した。安倍、プーチン両氏とも政権基盤は安泰で、支持率も一時よりは低下しているとはいえ、相対的には安定しており、交渉進展の好機だとも言える。

 だが、双方の主張の隔たりはとてつもなく大きい。日本側にとっての理想は「4島の即時一括返還」だが、実現の可能性は皆無だと言える。一方のロシア側は9月、「前提条件なしに年内に平和条約を締結しよう」とプーチン大統領が行った提案の実現が百点満点だが、日本側が受け入れられるはずもない。双方の本音は、日本側は2島先行返還と国後、択捉の帰属問題の協議継続で、ロシア側は2島返還での最終決着だろう。

 今回のシンガポールでの両首脳による合意は、安倍首相がロシア側の柔軟姿勢を引き出すために一歩歩み寄った結果だとみられる。このままでは交渉を動かせないと首相が判断して方針転換を図ったのであれば、率直に国民に説明すべきだ。

 継続中の外交交渉の具体的な中身を明かすことができないのは当然理解できる。ただ、長年堅持してきた基本方針を変更するのなら、理由を国民に説明する義務が為政者にはある。

 領土問題で譲歩してでもロシアとの交渉を決着させた方が日本の国益に資するとの判断もあり得るだろう。そうであるならば、政府の方針は不変だと強弁するのは不誠実であり、国民に説明して理解を求めるべきだ。首相は説明責任を果たさなければならない。

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