使われてこそ美 人間国宝・島岡達三

<下> 組み紐で新たな世界表現
(2005/06/07)
 島岡達三氏は一九五三年、益子焼の巨匠で師匠の濱田庄司氏から独立、師の自宅の近くに築窯した。だが、濱田氏は当初、弟子の作品を見るたびに表情を曇らせた。そして「島岡さん、早く自分の焼き物を作りなさい」と言ったという。島岡氏は悩み苦しんだ。
 そんな折、五〇年に栃木県窯業指導所に就職、古代土器の標本複製に携わったことを思い出し、縄文の手法を思い付いた。父親が作った組み紐(ひも)で素地の表面に文様を施し、白泥を掛けて埋め、乾燥後に白泥を削って文様を浮き上がらせる方法。それが「縄文象嵌(ぞうがん)」だ。
 この技法は、組み紐の種類によってさまざまな文様が浮き上がる。素地の種類や象嵌用の粘土、釉薬(ゆうやく)などを変えることでも新しい世界を表現できる。以来、常に「創造」を心がけ、縄文象嵌一筋に歩み続けた。九六年には、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
 だが、島岡氏は縄文象嵌を「作家の衣」だという。その中身は何か。「民芸の精神であり、濱田庄司の薫陶であると思っている」。原点は益子粘土に白象嵌を施し、地釉をかけ、登り窯で焼くこと。陶業六十年を迎える名匠の心には先人から継承した魂が宿る。