守ろう 生かそう 種差海岸―国名勝指定70周年―
| (9完)色あせない魅力 吉田初三郎に再び脚光 | |
| (2007/09/25) | |
◆ ◆ ◆ 空高く舞い上がる鳥の視点で描いた鳥瞰図の第一人者である初三郎は、大正―昭和初期の観光ブームに乗り、大きな人気を博した。 一九三二年、八戸市鳥瞰図の写生のため種差海岸を訪れた初三郎は、「ここはまさに日本一の絶景」と絶賛。芝生地前に自宅兼アトリエの「潮観荘」を構え、創作活動に励んだ。同時に、優れた風光を後世に残そうと、中央政財界の人脈を生かし名勝指定のため奔走。種差の存在を全国に知らしめる立役者となった。 没後五十年を記念し、市博物館が昨年開いた特別展「吉田初三郎と八戸」は、通常の展覧会としては異例とも言える六千人以上を集めた。東京、愛知、北海道などからも訪れ、同館の藤田敏雄主幹は「正直、初三郎ファンのすそ野の広さに驚いた」と振り返る。 種差観光協会は今年、地元飲食店や市水産科学館マリエントと連携し、初三郎の鳥瞰図展やトレッキングイベントを企画。柳沢卓美会長は「初三郎の素晴らしさを知ることは、種差海岸の魅力を再認識することにつながる」と強調。観光客の「知的欲求」を満たす素材としても有効活用する考えだ。 ◆ ◆ ◆ 白砂青松の砂浜が約二キロにわたって続き、散策ポイントの一つである大須賀浜が最近、鳴り砂の浜として注目を集めている。 砂浜や海水が汚染されると鳴かなくなるため、「環境のバロメーター」と称される鳴り砂。東通村の猿ケ森砂丘を含め、現在では全国で二十数カ所にしか残っていない。鳴り砂の存在は、海域を含めた種差海岸全体が健全な自然環境を保っていることを物語る。 二十九、三十の両日には今年で十二回目を数える全国鳴砂サミットが八戸市で開催される。大会を誘致したはちのへ小さな浜の会の佐々木一男幹事は「鳴り砂は貴重な自然の財産。広く市民の方々に知ってもらい、種差海岸から地球の環境問題を考えるきっかけになれば」と思いを巡らせる。 ◆ ◆ ◆ 吉田初三郎や鳴り砂をめぐる動きは、種差海岸の魅力を再発見しようという試みだ。これに対し、市が遊歩道沿いに整備する音声ガイダンスシステムは、新たな魅力を創出するための取り組みと言える。 種差海岸ゆかりの著名人のメッセージと観光案内の音声を、微弱なFM電波で発信。観光客やトレッキング客は携帯ラジオなどを使って聞くことができる。発信機は主な景勝ポイント十カ所に設置され、二十六日に本格稼働する予定だ。 種差海岸の魅力は国名勝指定から七十年がたった今も色あせていない。それは大いなる可能性を秘めている証拠であろう。十年後、種差海岸はどのような姿を見せてくれるのだろうか。 (報道部・広瀬知明、熊谷勝之)
【写真説明】マリエントに展示された吉田初三郎の「八戸市鳥瞰図」を興味深く見つめる市民ら=9月2日 |
