岐路に立つ国立公園 現場からの報告
第7部 原点を見つめて
| 2 奥入瀬渓流から 自然のままが本来の姿 | ||
| (2005/05/23) | ||
■危険木を伐採 「事故は不幸な出来事だった。けれど、ここまで切らなくても」。五月十五日、奥入瀬渓流石ケ戸休憩所近くの落枝事故現場で、県文化財保護協会副会長の栗村知弘さん(71)=八戸市=は、根元から伐採され、無残に切り刻まれたブナの姿に言葉を失った。 二〇〇三年八月に起きた落枝事故で大けがを負った茨城県在住の女性と夫は昨年七月、「事故防止対策を怠った」として、国と県に国家賠償を求め東京地裁に提訴。事故の予見可能性や管理責任をめぐって争われており、早ければ年内にも結審する見通しだ。 事故後、県は遊歩道沿いの危険木について、初の本格的な実態調査を実施。同年九月、百八十九本の枝や幹を伐採した。今春の調査では新たに約三百本が判明、伐採に向けた準備を進める。 「遊歩道を管理する以上、危険木は極力排除するしかない」(観光推進課)と説明するが、自然保護団体からは景観や生態系への影響を懸念する声が上がっている。 ■都市公園と違う 栗村さんもその一人だ。「自然のままにあるのが奥入瀬渓流の姿。観光客のため、だけで切ってしまうのはどうか。国立公園は都市公園とは違うのだから」 苦い思い出がある。一九七二年、県教委社会教育課で文化財行政を担当していた栗村さんは、当時、県サイドから高まっていた観光開発圧力にあらがっていた。ガードレールの設置案は「景観が死んでしまう」とつき返したものの、九段の滝付近に橋を架け、遊歩道を対岸に渡すルート変更を余儀なくされた。 「人が入り込めば、帰化植物が流入する。向こう岸だけは、手付かずの自然を残しておきたかった」と、今でも後悔の念にかられる。 ■本末転倒 渓流沿いに国道が走り、気軽に原生的な自然を楽しめる奥入瀬渓流では、国立公園が内包する自己矛盾である、「保護」と「利用」のバランスが常に問われ続けてきた。 栗村さんは「人間は自然を利用させてもらっているだけ。奥入瀬あっての観光であり、観光のために奥入瀬があるのではない。本末転倒は困る」と訴える。 奥入瀬渓流の環境保全と渋滞解消を目的に、県や十和田市、環境省などは一昨年からマイカー規制に踏み切った。しかし、今年は迂回(うかい)路の安全性に問題があるとして、警察側が実施に難色を示す。将来的な全面車両通行止めを視野に、県が進める青■(木へんに無)山バイパス計画は、現段階で着工、完成の見通しはまったく立っていない。 |
||